竹沢うるま写真展
1021日、103カ国を巡る旅の記録。
2010年3月18日、僕は日本を旅立った。
はじめは一年、長くても1年半と思っていた旅も、気がつけば1021日、103の国と地域を巡る長い旅となった。
そこには数え切れない出会いがあり、計ることのできない心の振幅があり、驚きと感動と不安と恐怖と、ありとあらゆる感情が埋めこまれている。話すべきこと、伝えることは山ほどある。しかし、旅を終えてから、どうしてもうまくそれらをこの口から発することができなかった。
エチオピア再奥部に住む原住民の神聖な儀式を撮影していたとき、激昂した村人にカラシニコフの銃口を突きつけられた話でも、南米アンデス山脈の山奥で踊り子に恋をした話でも、アマゾンの鬱蒼としたジャングルの中、シャーマンに導かれて深い精神世界をさまよった話でも、みんなが聞きたいような刺激的な話はいくらでもある。でもできない。それを伝えて何になるのだろうか、という思いが、自分の中からなくならない。一体、そんな物語や言葉でこの旅の何を伝えられるというのだろうか。この旅は、ある時点からもはや言葉に置き換えられるものではなくなったのかもしれない。それほどに僕が見てきた世界は大きかった。
一歩踏み出せば、そこに世界が広がり、また一歩踏み出せば、またそこに新たな道が現れる。ひとつの世界が終わったと思って安堵していたら、新たな扉が眼の間に現れ、落胆と不安と期待とともにその扉に手をかける。すると、またその先に新たな世界が広がっていた。出会い、別れ、そしてまた歩む。その繰り返し。世界はどこまで行っても終わりがなかった。
世界は広い。僕らが思うよりも遙かに広く、そして深い。
それは僕がこの旅で知った一番大切なことである。
広さは大地の広さであり、深さは人の心の深さである。そのふたつが交わる瞬間、大地は躍動し、人は輝き始める。
その瞬間を求めて僕は旅を続けた。
写真家 竹沢うるま
竹沢うるま写真展「WALKABOUT -1021日、103カ国を巡る旅の記録-」
会場:キヤノンギャラリー銀座・名古屋・梅田・仙台・札幌
期間:
銀座 2013/08/01-08/07
名古屋 2023/08/22-09/04
梅田 2023/09/12-09/18
仙台 2013/10/03-10/15
札幌 2013/10/24-11/5