竹沢うるま写真展
キューバ写真展 ブエナビスタ
初めてキューバを訪れた時、僕は長い旅の途中だった。メキシコのカンクンから飛行機に乗り、ハバナに 降り立った。おんぼろのタクシーで街中に向かうにつれて、そこかしこで革命の残り香が漂い始め、情熱の エネルギーが滲み出す。ハバナの旧市街に到着し、車を降りると海から吹く風が体を包み、心が旅の高揚感 で満たされた。ハバナでは毎日、旧市街の路地を、音を頼りに足が棒になるまで歩き回った。この街では音 が道案内をしてくれる。耳を澄まし、音を辿って歩くと、必ずと言っていいほど新鮮な出会いがそこにあり、 驚きが待っていた。
そして、三年弱にわたる長い旅を終えて日本に戻りしばらくしたとき、耳が覚えたキューバの音が忘れら れずに僕は再びキューバを訪れることになった。ハバナの街は変わらず音に溢れ、潮の香りに包まれていた。
僕は再び耳が感じるままに、キューバを旅した。
「Buena Vista」は、キューバに漂う独特の空気感の記録であり、疾走する時代のアーカイブである。1959 年のキューバ革命以降、イデオロギーの狭間で翻弄され続けた小さな島国で積み重ねられてきた時間が生み 出す独特の空気感。そして駆け抜けてきた時代の疾走感。それらを音を頼りに写真に記録し、まとめた。
同時に、竹沢うるまという写真家がこの時代を生き、その瞬間そこに立っていたという記録でもある。写 真に収まる彼らの目線の先に愛すべきキューバの風景が広がり、その中に僕が存在している。その時代、僕 はそこに確かに立っていた。耳を澄まし、歩き、そして心を震わせていた。これらの写真はその証である。
ハバナの海岸通りには変わらず波が押し寄せ、岸壁の下で砕ける。その音が街に響く。それはこれまで絶 え間なく続いてきたものであり、これからも変わらずそこに響き続けるだろう。しかし、その音に耳を澄ま すものたちは、永遠ではない。
変わりゆくものと変わらないもの。その狭間で、聞き、感じ、考え、そして写真を撮った。
写真家 竹沢うるま
キューバ写真展「Buena Vista」
革命以降、イデオロギーの狭間で翻弄され続けた小国で積み重ねられてきた独特の空気感と時代の疾走感。アメリカとの国交正常化で、消えゆくキューバの記録。
東京
会場:AL 1F main space
期間:2015/07/31 – 08/09
京都
会場:gallery Main
期間:2015/10/16-10/25